酒袋のこの角がポイント

私たちは槽(ふね)と呼ばれる搾り機でお酒を搾っています。

酒袋に醪(まだ粕と清酒にわかれていないもの)を入れて槽に並べていくこと200枚以上。

搾るときも大変なんですけど、その後のお洗濯がまたさらに大変なのです。

まず粕を剥がしますが、これがまた重労働。なんてったって250kg以上は粕が出ますので。

そうして粕を袋から出したら裏返しにして、まずは手洗いで丁寧に布目に入り込んでる粕などを洗い出します。特に袋の角が大切です。

そうして洗濯機で洗ってさらに表に返してもう一度洗います。

洗うこと200枚以上。

一日仕事です。

でもこれをきちんとやるかやらないかで、せっかく大切に育てたお酒がパーになるか、美味しいままお届けできるかが決まります。

日本酒は私と違って本当にデリケート。

些細な出来事で全く別物のお酒になってしまうのです。

なので一つ一つの工程で、【きちんとやる】ことがとても大事なのです。

よく設備が最新式のになれば美味しくなると言われますが、本当にそうでしょうか?

私は、例えば使った道具の洗浄を丁寧にするとか、きちんと綺麗になるまで洗濯するというような、当たり前のようなことが、毎日当たり前に行われることが何より品質に関わり、何より大切で、何より難しいことだと思っています。

だって人は易きに流れる生き物なので。当たり前のことほど、ついついどこかで手を抜きたがるものですよね。

私はズボラな人間のくせに負けず嫌いだという厄介な性格なので、毎日クロブンコとシロブンコがせめぎ合っています。

自分に負けそうなとき、これまで手にした賞状の前で「返却させられるぞ」と囁いています。