師走の繁忙期。

とにかく時間に追われているが、ちょっとした隙間時間があった。

 

彼は今だとばかりに走った。

走りに走った。

 

そしてようやく目的を果たし、颯爽と家路を足早に歩いた。

 

待っていたのはいつもと変わらない温かな家。

の、はずだった。

 

 

1時間経ち・・・

2時間が経ち・・・

 

さらに4時間・・・

 

待てども待てども彼の耳には家族の声は聞こえない。

 

 

おかしい。。。キョロキョロ

 

 

不安と焦りで眠れない夜を過ごし、

とうとう翌朝がやって来た。

 

今日も朝から蔵はいつもと同じ風景。

いつもと変わらず妻とふたりきりの作業。

 

意を決して彼は呟いてみた。

 

 

あ、あのさぁ、昨日髪切ったんだよね。

とうとう誰も気付かなかったニコ

 

 

捨てられた子犬のような瞳をして妻の顔を見ている。

しかし、いつものように妻は冷たかった。

 

 

それって波平が床屋に行ったよレベルの話じゃない?

どこに切る髪あった??

 

 

滝汗滝汗滝汗滝汗滝汗滝汗

 

 

ど、同窓会までに行きたかったんだよ。

もう絶対行けないと思ってさえーん

 

 

あのさー、半世紀も生きて来てさー、

何を今さら同窓会に期待してるわけよ?

 

 

ゲローゲローゲローゲローゲローゲロー

 

 

こうして彼のうっすらとした淡い期待は、

せわしない蔵の暗がりへと葬り去られて行ったのだった。

 

 

それでもめげずにドヤ(-_-)ののびちゃん。

垂れ目具合が半端ない~

 

つづく